遅イズムの実践のための実験絵画「Oil Seller Painting」
Experimental Painting "Oil Seller Painting" for the Practice of OSO(Slow)-ism

「第4回 遅四グランプリ 千住・仲町の家大会 -遅の細道-」 (2023.7/16) 千住 仲町の家
" The 4th SLOW MINI 4WD GP " (2023.7/16) at Nakacho House

機械油・和紙 / 振り子、筆、落款印、印泥、文鎮、下敷き、木材、糸、他 / 2023


遅イズムの実践のための実験芸術シリーズより。
慣用句「油を売る」は、近世の油の行商人が客と長話をしながら油を販売していたことから、仕事の途中で怠けること、また無駄話をして時間を浪費することなどを指して使われる。
しかし、この油売りが長話をするのには理由があったようである。当時の油は粘性が高く、柄杓から客の器に注ぐ際に油の雫がなかなか途切れず時間がかかったため、客と世間話をして間を持たせていたとされている。つまり油の販売で生じる時間と会話には必然性があり、決して浪費などではなかったのである。
この慣用句「油を売る」から着想を得たオイルセラー・ペインティングとは、振り子の先端に高粘度の機械油をつけた筆を吊るし、床に敷いた紙に長い時間をかけてドリップする絵画制作手法、及びその手法によって生み出させる作品である。

画面の乾燥までに長い月日を必要とし、また数百年の保存にも耐え得ることが立証されている油絵具は 「遅」のメディウムと言えるだろう。
一方で、かつて一世を風靡したアクション・ペインティングは多くの場合「遅」のメディウムである油絵具を使いながら、重力や絵具を叩きつける物理的なエネルギーと作家のアクションが生じる時間と空間を画面内に瞬間的に凝縮した作品で、その制作スピードは「速い」ことが一般的である。オイルセラー・ペインティングは油売りの理論に基づき、従来のアクション・ペインティングにおいてはブラックホールのように作品内に凝縮されていたエネルギーを弛緩させ、広大な宇宙的時間の中に霧散させることで作品を再度「遅」の領域に戻す試みである。



Back to index
inserted by FC2 system