《Prospective Oldie》

「雑居」 (2016.12/10-11) くすのき荘
" Zakkyo " (Dec.10-11,2016) at Kusunoki Soh

映像 (QuickTime) , 6分 (ループ)・ブラウン管テレビ・メディアプレーヤー・MP3プレーヤー・スピーカー・蛍光灯・点滅器、他 / 2016


「Prospective Oldie」は、これまで作家のインスタレーションや映像作品に一貫していた、“約束された死への恐怖”、“永遠への憧れ”を背景とした単純なループ運動という前提を踏まえつつ、1つ飛躍してみる試み。
同世代の間で「日本の音楽で一番アツかったのは90年代のポップスだ」というような話を耳にすることが多くある。
これは我々世代が90年代に幼少期を過ごしたことによるひいきもあり仕方がない部分もあるが、はたして本当にそうだろうか。
演歌をベースにフォークやロックなどの西洋の大衆音楽の要素を断片的且つ恣意的に吸収し、グロテスクに奇形化して出来上がった60~70年代の歌謡曲こそ、より日本的ではないだろうか。
「Prospective Oldie (将来の懐メロ、または歌謡曲)」と銘打った本作ではガラパゴス的に進化を続け奇形的に増幅する歌謡曲のイメージ(この歌謡曲というモチーフは飽くまでメタファー)を空き家の使われなくなった古い浴室にインストールした。

脱衣所に入るとブラウン管テレビが砂嵐の画面を映し続けている。これはフェイクの砂嵐で、実際は砂嵐を模倣したアニメーションであり、30秒に1回1コマだけサブリミナル的に「Prospective Oldie」の文字が様々な字体で映し出される。
扉が開け放たれた浴室からは演歌歌謡曲をノイジーにリミックスしたサウンドが大音量で流れる。浴室の赤い蛍光灯は切れかけたように明滅を繰り返すが、これもまた切れかけのフェイクで電源のON/OFFによって一定のリズムを刻んでいる。
奇形化されたまがいもの(フェイク)の文化は既に始まっており、ループ、増幅を繰り返して今に至り未来へと向かう。
これは否定や皮肉ではない。これも1つの趣として。懐古主義は嫌いだ。これは未来を描いたSFなのである。

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